全国一斉赤とんぼ調査

2002、2003、2004年はご協力ありがとうございました。
おかげさまで、2003年4月に調査報告書を完成させることができました。


赤トンボが問いかけてくるもの-赤トンボの文化-

むさしの里山研究会・農と自然の研究所

どうして日本人は、赤トンボが好きなのでしょうか。この調査の主役の薄羽黄トンボと秋アカネは、百姓に寄ってきます。田んぼの中で草をとる百姓に寄り添って飛びます。腰をかがめてじっとしていると、耳のそばを通るときに羽音も聞くこともできます。この国には二百種類ほどのトンボがいますが、この二種はあまり人を恐れないようです。

彼女ら、彼らは田の中の百姓のそばに行くと、エサがいっぱい安心して食べられることを知っているのです。一方百姓は赤トンボを大切にしてきました。2500年前から、この国の各地で田んぼが開かれてきました。それにつれ、赤トンボが増えてきたのです。原日本人は、このトンボは稲と一緒に渡ってきたのだと思ったのかもしれません。稲を携えて来た渡来人は、ここにもふるさとのトンボがいると感激したのかもしれません。

もちろん、赤トンボは田んぼの益虫ですが、それだけではない何かがあります。このトンボに精霊トンボ、盆トンボという名前をつけて、先祖のタマシイを乗せてやってきて、また帰っていくという物語が、全国各地に残っているのは、このトンボから何かを受けとり、このトンボに何かを託したのです。その何かとは、何だったのでしょうか。その何かが、2500年間たった現在に伝わっているから、私たちは何も見あたらない空よりも、赤トンボが群れ飛ぶ夕空に、心がふるえるのです。だからこうしてまた、あなたも私も、赤トンボに呼びかけているのです。その何かが、かよいあう気がしませんか。それがこの国の稲作文化の核にあるものです。

その何かをもう一度、見つけるために、この調査は企画されたといってもいいのです。ここでは、その何かを言葉で語ることをやめます。あなたが赤トンボに向き合い、あなたの思いがわき上がり、言葉になって溢れる瞬間を待ちます。

赤トンボにとっては、試練の時代が続いています。単に田んぼで生きにくくなった、ということだけでなく、赤トンボにそそがれる“まなざし”が決定的に減ってしまいました。これこそ、赤トンボの危機の本質です。
百姓仕事の危機の本体です。近代化された「農業技術」には、赤トンボに注ぐまなざしが見あたりません。
しかし、「百姓仕事」には残っているのです。

田んぼによっては、ごはん一杯(約稲3株分になります)に赤トンボが1匹ついています。意味がわかりますか。同じ百姓仕事によって、米も赤トンボも、同じ田んぼで育っているのです。同様に「生産」されている、と言ってもいいかもしれません。今までの世界から見ていると、コメにしか見えなかったものが、別のまなざしを獲得すると、アカトンボに見えるのです。ひょっとすると、同じものを別の角度から見ているに過ぎないかもしれません。ここに、アカトンボに導かれて、農の新しい見方が登場したのです。

みなさんの報告を心待ちにしています。あなたの“まなざし”の深さが農と自然を救うかもしれません。

エサを食べるアキアカネ

交尾中のアキアカネ


赤トンボとは

赤トンボと言ったとき、二つの考え方があります。その一つは“体が赤いトンボ”全般を指すもので、アキアカネ、ナツアカネ、ウスバキトンボ、ショウジョウトンボなどが該当します。もう一つが”アカネ属”というグループに属するトンボを指すもので、アキアカネやナツアカネはアカネ属ですが、ショウジョウトンボやウスバキトンボはアカネ属ではありません。また、ナニワトンボ、ムツアカネなど体が赤くない種類も含まれます。

今回の調査でで前者、すなわち体が赤くなるトンボで、その中でも普通に見られるアキカネとウスバキトンボを中心としたトンボを対象にしています。

調査の主催者

今回の調査はNPO法人むさしの里山研究会(当会)とNPO法人農と自然の研究所が2002年~2004年の3年間の計画で環境事業団地球環境基金の助成を得て実施します。

調査のねらい

赤トンボをとおして身近な自然、生き物を育む田んぼの恵みをみんなで考えるきっかけとすることが主なねらいです。それと同時に、外国から海を渡ってくると考えられているウスバキトンボの移動ルートを解明することや、最近激減していると言われるアキアカネの生息状況を全国規模で明らかにしようというねらいもあります。

調査の方法

全国の情報を集めるためアンケート調査を行います。そのアンケートはトンボについての知識を持っている専門家向きのものと専門的知識はないが、調査に協力したいと考えるている一般向きのものとがあります。
専門家向きのアンケートは白色の用紙、一般向きのアンケートは水色の用紙です。自分に合った方を選んで回答して下さい(もちろん両方のアンケートにお答え下さって結構です)。アンケートの回答はFAX、郵送ホームページなどでお願いします。ただし大変心苦しいのですがその際の通信費は各自ご負担下さい。そのかわりアンケートをお寄せ下さった方には今回の調査報告書をお送りします。

また、国内外のウスバキトンボのDNAの比較調査も行います。このためウスバキトンボの標本もお送り下さると幸いです。標本は過去5年以内に採集したもので、無水エタノールで固定したものが良いのですが、乾燥標本でも構いません。標本には1個体ずつ採集地、採集年月日、採集者を付記して下さい。この場合の送料は当会で負担しますので、運賃着払いの宅配便、または郵送でお願いします(郵送の場合後日送料分の切手をお送りします)。

飛翔中のウスバキトンボ

高原にいるアキアカネ



移動中のウスバキトンボ

全身真っ赤になったショウジョウトンボのオス




農と自然の研究所
特定非営利活動法人・福岡県二丈町:代表理事宇根豊)

この研究所の目指すところは、私たちの「まなざし」の転換です。これ以上日本の「自然」をタダどりするなら、「自然」を支えている「百姓仕事」は滅びます。そして、花に惹かれ、赤トンボの風景を愛で、カエルの声に命を感じる私たちの感性も失われていくのではないでしょうか。農業のカネになる部分だけにしか価値を見いだせず、この国の農業技術や、農学や、農政が、組み立てられてきた異常さに、気づく「まなざし」が必要です。だから、カネにならない自然が、なぜ百姓仕事がないと成立しないのか、その本質を明らかにせねばならないのです。それを、技術と思想と政策と文化にしていくのです。ぜひ、あなたも会員になって、田んぼの畦に立ってください。年会費は2000円です。

※NPO法人農と自然の研究所は、2010年4月17日に、10年の使命を終えて解散し、任意団体農と自然の研究所が出版物の販売などを引き継ぎました。

NPO法人 むさしの里山研究会

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